ちょっと工夫してBカーブでトーンコントロール回路を作る
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トーンコントロール回路の設計例や制作例は多くありますが,よく「Aカーブのボリュームを使って作る」という解説があるかと思います。しかし,Aカーブは連動誤差(ギャングエラー)などが発生したり,取り扱いが少なかったりする事があり,何とかBカーブで作れないか?というアイディアです。
このページではトーンコントロールを少しおさらいしつつ,そのアイディアの話を書こうかと思います。
(おさらいはいらない,アイディアから見たいという人は 【こちら】)
まずはトーンコントロール回路ってどんな回路か?というお話から始めようかと思います。
最も,このページをわざわざ探してきた人は説明するまでもないかもしれませんね(苦笑
物としてはオーディオのパワーアンプやプリアンプに搭載される機能で,低音や高音の量を調節するための機能です。
「Bass」と「Treble」と書かれた低音(バスドラムやベース)や高音(ハットなどの金属の響き)を強くしたり弱くしたりするツマミが付いているのを見た事があるかと思います。
中には「Bass Boost」とい称して,低音を強めるだけの機能を持たせたものも存在しますが,考え方には同じような事をしていますし,回路としてはトーンコントロール回路の応用でも作れます。
さて,そんなトーンコントロール回路ですが,回路としてはどうなっているかというと・・・
見ての通りのシンプルな回路なもので,アンプを作った事がある人の中には付加機能として作ってみた事があるという人も結構いるのではないでしょうか?
さて回路としてはシンプルな回路ですが,この回路,動作としてはどうなってるでしょう?
実は動作もシンプル,少し動作の仕組みを見てみましょう。
この辺の説明は色々なサイトに掲載がありますから,ここでは低音部分だけ,かつ要点だけ説明しようと思います。
上図の左の図は低音側の回路だけを書きだしたものです。
あ,因みに低音の増減だけでいいという場合はこの回路でも動作します。ただ,高音側だけの場合はちょっと切り抜き方に工夫が必要です。
さて,この回路でボリュームを「右目いっぱい」=「強める側(増加側)に目いっぱい」に回したときの回路はどうなるでしょう?
回路図上で上側にボリュームの真ん中の端子が移動していきますから,上図の中央の図のような状態になります。するとC1はショートされてしまうので無いのも同然となり,整理すると右の図のようになります。
では,ここでC2を無視するとどうなるでしょう?R1,VR,R2からなる単なる分圧回路となります。
なので,C2の影響を受けない周波数では単純にボリュームを上げた状態となります。
ではC2はどのように影響してくるでしょう?
コンデンサは高い周波数ほど電気をよく通す性質があり,「コンデンサやコイルの交流回路での電気の流れ具合」=「抵抗」に相当する「インピーダンス」は,コンデンサの場合は周波数に単純に反比例する性質があります。
ここで周波数に反比例しインピーダンス(≒抵抗値)が変化する素子がVR2と並列につながっていますから,VR2とC2は交流回路としては並列につながれた抵抗と同じになります。
つまり並列の合成抵抗が周波数に応じ変化する事になります。
という事は・・・分圧回路の分圧比が周波数により変化する分圧回路となります。
ここでコンデンサのインピーダンスは周波数に反比例しますから周波数が低い時はインピーダンスが高く,合成抵抗も高くなり出力~GND間のインピーダンスが上がるため,分圧比は上がり大きな振幅の信号として通過します。
逆に周波数が高い時はインピーダンスが低く,合成抵抗も低くなり出力~GND間のインピーダンスも下がりますから分圧比が下がり小さな振幅の信号として通過します。
と,周波数に応じて,かつ「周波数が低い」=「低音」が「高音と比較して」大きく通過しますよね?
これがトーンコントロール回路の低音を強くできる仕組みです。
ではここで,ボリュームを「左目いっぱい」=「弱める側(減衰側)目いっぱい」にしたらどうでしょう?
今度はC1が残ってC2がショート,かつ信号の出力はR1側ではなくR2側になります。
先ほどと同じようにC1を無視すると分圧比は下がり音は小さくなります。
そして,これまた先ほどと同じように「コンデンサは周波数にインピーダンス≒抵抗が反比例する」と考えれば,今度は「周波数が高い方が抵抗が少ない」=「分圧比が上がる」=「信号が強く」なります。
そのため,周波数が低いと信号は弱い,周波数が高いと信号が強い,低音が「高音と比較して」小さくなります。
ここれがトーンコントロール回路で低音を弱くできる仕組みとなります。
このように,ボリュームの位置で低音を調整できるんですね。
・・・と文章中でやけに「比較して」と強調しましたが,分圧回路であるため元の信号より必ず出力は小さくなります。
あくまで比較で大きく感じていると言う物です。
さて,ここでは低音側で説明してきましたが,高音は今まで説明した事の高音版をやっているだけになります。
もしよろしければ,「抵抗器がここでー・・・コンデンサがここ」と目で追いかけてみてください。
さて,トーンコントロール回路の説明や製作例を見ていると「トーンコントロール回路はAカーブで作る」という話を見かけるかと思います。
でも,「なんでAカーブなんだろう?」と思った事ありませんか?
過去に読んだ本にちらっと書いてあった内容では,以下の2点があるようです。
(すいません,本の名前は忘れてしまいした)
1.センター付近(フラット付近)の調整をしやすいように
2.増と減の量のバランスを取りやすいように,増加量を大きく取れるように
1についてはAカーブをご存じな方はわかりますね?Aカーブとは下図に示す左側のようなボリュームの特性です。
横軸がボリュームの回転の量,縦軸が抵抗の変化量です。
なんだか最初は緩やかで,途中から急に変化するようなグラフですね?
人間の耳の音の感じ方は対数的な変化なので,最初は穏やかに変化する,対数的の逆の指数的な変化にして,回し始めの頃に急に音が大きくなったように感じないようにしたボリュームがAカーブです。
・・・いや,多分Aカーブの事を知っている人はほかの事が気になってしょうがないでしょうね(苦笑
「あれ!?弓なりじゃないの!?」「え?この05と10とか30とかって何?Aカーブって1種類じゃないの?」「てか,何?この”JIS D”って?」等々,目をまん丸くしている人もいるかもしれません。
よく,きれいな弓なりで描かれるAカーブですが,実際はこんな感じで完全な弓なりではなく,やや2段階の折れ線のような特性になっています。
ここで05Aや10Aというのはその折れ線の変化の急さの違い,曲がり具合の違いで,ボリュームを半分まで回したときに全体の抵抗値に対し何%の抵抗値か?という値です。
見てもらうとわかりますが10Aだと回転量が50%=ボリュームの位置が半分の時に抵抗値は10%になってますよね?30Aは30%になってます。この数値は曲線の変化の急さを表す数値です。
さて,もう一つ残るは「JIS D」です。これ,「Dカーブ」という意味です。
ボリュームの特性,お馴染みはA/B/Cカーブですが,「Dカーブ」や「Wカーブ」という特性もありました。
先の図の右側はBカーブの仲間の図なのですが,3Bと書かれた特性にも「JIS W」と書かれていますね?こちらは「Wカーブ」という特性で,Bカーブの仲間です。
Dカーブに話を戻せば,どうもエフェクターやギターでDカーブが使われているようで,時折探している人を見かけます。先の図の通り,10AがDカーブ相当ですので,もし10Aと書かれているボリュームがあればそれを使えばOKです。
え?JISって日本の規格の名前じゃない?って?実はこのA/B/Cカーブという呼び名,国により通じないそうです。
かつ,実際にJISの規格を見てみると「Aの仲間」といった表記はありますが,単純に「Aカーブ」という表記ではなくなっていました。
詳しくは JIS C 5260-1 を見てみてください。先の「え!?弓なりじゃないの!?」も規格中の「2.2用語及び定義」や「付属書JA」(いずれも2014年版での章節)にそっくりな図が出てきます。
さて,Aカーブが何者かわかると・・・1は理解できますね?
特性の変化が指数っぽくなっているので徐々に調整が効いていく,中央付近で急に強さが変わったように感じにくいというものです。
では2は?というお話です。
先に説明した通り,トーンコントロール回路は一種の分圧回路で,音量のボリュームと同じです。
ここで,トーンコントロールのつまみって真ん中が増も減もしてない位置(フラット位置)ですよね?
これをBカーブで作ったらどうなるでしょう?
R1やR2はいったん置いておいて,ボリュームが真ん中という事は抵抗値は半分で分圧比は50%です。
ココから「増加側目いっぱい」=「ボリューム最大」にしたらどうでしょう?
簡単ですね,分圧比100%です。
では,つまみを真ん中から最大にしたとき,電気信号は「何倍」になったでしょう?
ココがミソです。50%から100%ですから2倍ですよね?つまり約+6dBです。
ではここで,減衰側はどうなるでしょう?
「減衰側目いっぱい」=「ボリューム最小」にしたら分圧比は0%です。
ここで「あれ?」と思いませんか?
増加側は2倍までにしかならないのに,減衰側は無限に小さくできてしまいます。
仮に減衰側で2分の1にしようとすると,50%の半分ですから25%,回す量は4分の1で増加側に回す量の半分になってしまいます。
つまり,減衰と増加でつまみの回した量に対する調整の利き方が違ってしまうんですね。
そこでAカーブ(15A)の登場です。
Aカーブは真ん中で15%ですから,増加目いっぱいの100%の6.67分の1です。
つまり,Aカーブであれば真ん中から増加目いっぱいに回すと6.67倍,+16.5dBまで低音を大きくする事ができます。先ほどより増加の量が増えてますね?
では,減衰させる側はどの位置で6.67分の1になるでしょう?
これは先ほどの特性を見ると・・・ちょっとわかりにくいですが,回転角で20%程度の位置まで,30%程度戻す事になるようです。
すると先ほどの半回転対4分の1回転,倍・半分よりは差が減っています。
これらが2の理由となります。
このような理由から,Aカーブを使う,となっているようです。
さて,Aカーブがトーンコントロールに適しているのはわかりましたが,「なら素直にAカーブ使えばいいじゃない!なんでこのページのタイトル,Bカーブを使おうとしてるのよ?」って話です。
これ,Aカーブって実は欠点があります。
連動誤差(ギャングエラー)が出やすいんです。
連動って何が?という話ですが,今は音楽って通常ステレオで右と左の2つのチャンネルの音を同時に調整しますよね?
するとボリュームは1つの軸で2つの可変抵抗(ボリューム)が回る「2連」というものを使います。
連動誤差は,この2つのボリュームの連動のズレの事です。
ここでAカーブとBカーブの特性を思い出すと,Bカーブは直線ですから抵抗体を均一に塗れば出来上がります。
しかし,Aカーブは途中で抵抗の変化の傾斜が変わるので,途中までは抵抗が少なくなるように塗り,途中からは抵抗が多くなるようにと,塗り方を変える事になります。
つまり,途中で塗り方を加減のをする分,ズレる(誤差を生じる)要素が増えるんですね。
結果,「Bカーブに比べ」ズレを生じやすいというものです。
で,これが音量のボリュームだったらどうでしょう?ズレの具合が違っていたら,左右で音量が違ってしまいます。
これを理由にAカーブを嫌う人は時折見負けます。
ここで,このズレが2つのボリュームで全く同じようにズレていれば左右の音に差は生じません。
しかし,ズレたからともう一つ同じようにズレた物を作るってのも何だか妙な話です。
というか,そんな器用な事ができてたらズレを生じさせていないでしょう。
結果,ズレにより差が生じたり,そもそもズレが発生しやすかったりとアンバランスになりやすいんですね。
なので,連動誤差が少ないBカーブを工夫してAカーブのように見せかけ,連動誤差を気にしなくてもよいようにしよう,というのが今回の目的です。
さて,Aカーブは連動誤差が問題になる事がある,という事はわかりましたが,Bカーブでは回し始めの頃が急に音が大きくなったように感じてしまいます。
なんかいい方法がないか?というお話を。
これ,実はちょっとした工夫で簡単に特性を作れてしまいます。結構昔から知られている方法です。
ここでは考えるのがシンプルな,音量のボリュームで見ていきましょう。
上図の様にボリュームの真ん中とGND側の端子間(2-3端子間)に抵抗器を並列に入れると,真ん中のグラフの通りAカーブの様な弓なりの変化に似せる事ができます。
これ,ボリュームの2-3端子間に抵抗器を並列につなぐと2-3端子間はつないだ抵抗器との並列の合成抵抗となります。
ここでボリュームを回せば回すほど並列の範囲が変化していきますが,2つの並列の抵抗器の合成抵抗はご存じ「和分の積」です。
2つの抵抗値を掛けたものを,2つの抵抗値を足したもので割るんでしたね?
片や掛け算,片や足し算のため,直線的な変化にならない,非線形的な変化になります。
それを分圧回路として分圧比を計算すると,1-2間は直線的な変化,2-3間は非線形と,結果このように曲線的な変化になります。
ただ,これ欠点が一つあります。それが上図の右のグラフです。
ボリュームを上げれば上げるほど,ボリューム全体中のRaが並列になる部分が増えていきます。
するとどんどん並列接続により抵抗値が低くなる部分が増えていき,ボリュームを回せば回すほど1-3間,ボリューム全体の抵抗値が変化,減っていってしまいます。
入力信号は1-3間に入力しますから,信号源からすれば負荷のインピーダンスが変化する事になります。
信号源側の出力インピーダンスが低ければ問題になりませんが,インピーダンスが高い場合はボリュームの抵抗値が下がったがために出力が低下したりと,不具合が起きる場合があります。
最も,現在は非常に低いインピーダンスで出力している事がほとんどですから,問題になる事はまれでしょう。
さて,抵抗器1本でAカーブの様な特性にできる事はわかりましたが,ちょっとイタズラ。
Cカーブは作れないか?試してみましょう。これも簡単です。
Aカーブが2-3間なのですから,Cカーブは・・・
そう,1-2間に抵抗器を並列につなげば作れます。
理屈としては先ほどと同じ,その裏返しです。
するとここでもう一つイタズラしてみたくなりませんか?
これ,1-2間も2-3間も抵抗器を並列に繋いだらどうなるんだろう?と。
実はこんな特性になります。
3Bカーブの逆というか,両端が変化が大きく,中央付近は変化が緩やかなカーブになります。
・・・と,ここで「あれ?コレトーンコントロールにちょうどいいんじゃ?」と思いませんか?
中央付近では変化が穏やかで微調整しやすく,両端へ向かって指数的変化,トーンコントロールにうってつけです。
というのが今回のアイディアの元です。
実はもう一つ狙ってる事があるのですが・・・それは次の章で。
では,なんだかいい感じに使えそうなのでいろいろと計算してみましょう。
まずは回路図から。一旦,低音分だけ考えてみる事にします。
トーンコントロールの低音側の本来の回路は上図の左の回路ですが,ボリュームの特性を調整できるよう右の回路の様に抵抗器を並列に接続します。
この回路を・・・
いろいろ計算してグラフを作ってみました。
・・・Excelでなっ!このやり方がお勧めか?と聞かれると微妙だけど!
実は先に登場した抵抗器を足した場合のグラフもExcelで作っています。
今は便利なLTSpice等のSpiceがあるのに?という声が聞こえてきそうですが,この程度の回路だといっそExcelで計算した方が後々でいろいろと楽かと思います。
例えば,E24系列に丸めたちょうどいい定数を探す,といったシーンでは数値を打ち換えれば即座にグラフに反映されますし,「一番ずれているところはどこだろう?」と調べたくなったとしても,集計関数や条件付き書式を使えば最大とそのハイライトといった事が簡単にできます。
一見LTSpice等のシミュレーターの方が楽に見えますが,やりたい事によってはExcelの方が便利な事もあります。
数式も絶対と相対の参照をうまく使えば,物の15分ぐらいでこの程度の計算とグラフであれば作れます。
設計を行う上でExcelは便利なツールです。
計算式は先に「整理すれば単なる分圧回路」と書きましたが,利得であればコンデンサのインピーダンスが求まればホントに分圧回路と思って計算すれば算出できます。(この時,並列・直列のインピーダンスの求め方だけ気を付けてください)
位相はやや頭を使うのでいったん置いといて,Excelである程度特性を設計,最後に位相を含めてLTSpiceなどのシミュレーターを活用し確認する方が,個人的には早いかな?と感じます。
もちろん,大きい回路や複雑な回路は最初からSpiceの方が早いでしょう。この辺は柔軟でいいと思います。
では,まずは単純にBカーブを使用するとどうなるか?のグラフから。
(VR=100kΩ, Rf-a=4.7k, Rf-b=4.7k, Rp-a=1GΩ≒∞, Rp-b=1GΩ≒∞, C-a=0.15μF, C-b=0.15μF)
上図の定数では,実際に作ると特性的に量感がちょっと足りないかもしれません。
今回は使用するあてがあり,それに合わせて増加/減衰の周波数等は検討していますので参考程度に見てください。
さて,グラフを見てみると,増加側はRf-aがあるので+6dBよりは少し少なめですが,先の説明の通り100%は50%の「2倍」,概ね+6dBになっています。
減衰側はコレまたRf-bがあるので完全に0にはなりませんが,先の説明の通りかなり0に近づき-19dBとなっています。
かつ,よく見るとボリュームの位置ごとのグラフの間隔が増加と減衰で異なりますね?
このように,Bカーブを使うと減衰ばかり効きが良くなってしまいます。
最も,コレでも使えない事はないので,わかっている上で使う分にはアリでしょう。
では次,先に説明した抵抗器をボリュームと並列に入れた回路のグラフを。
(VR=250kΩ, RF-a=5.6kΩ, Rf-b=2.7kΩ, Rp-a=330kΩ, Rp-b=68kΩ, C-a=0.1μF, C-b=0.22μF)
先ほどと異なり,まず増加側が+8.8dB程度にまで増えました。
更に±10dBにグラフの範囲を絞ってみると・・・
ボリュームの位置ごとの間隔も増加と減衰でおおむね同じになっていますし,増加に着目すれば50~60%の変化より80~90%の変化の方が広くなっています。
Aカーブを使う理由の通りになってます。
更に,よ〜く見ると・・・増加が始まる周波数がボリュームを回すに連れ徐々に高くなっています。
これは先に説明した特性の変化とともにボリューム全体の抵抗値も変化するという点も使用しています。
下図のグラフは抵抗器を並列に繋いだ場合のボリュームの抵抗の変化量のグラフです。
このように指数的な変化に近くなり,ボリュームの動作もAカーブを選ぶ理由の通りの動作になっています。
かつ,両端の方が中央より変化が急なカーブになっており,抵抗器を足して特性を作る方法を選ぶ理由の通りになっています。
ここで右のグラフを見ると,ボリューム全体の見かけ上の全体の抵抗値も変化しています。この点がミソです。
先にトーンコントロールは一種分圧回路であるかのように説明していますが,一般的にはCRフィルター回路です。
(最も,フィルターって物が周波数によって分圧比が変わる分圧回路なのですが・・・)
CRフィルターを構成する抵抗の抵抗値が減ればフィルターが作用する周波数が上がります。
結果,このような特性になります。
これが先に書いた「もう一つ狙っている事」で,作用する周波数も同時に変えられるという物です。
おそらく,この点に気が付かなかったらここまで深く検討しなかったと思います。
低音の増加させる場合なのですが,「より高い周波数まで増加」=「増加する範囲が広い」方が低い側のたくさんの音程が聞こえるようになるため,音のボリューム感が増します。
結果,より強く低音が増加したように感じるようになります。
逆に減衰側では抵抗値が高くなっています。先の理屈で考えれば,フィルターが作用する周波数が低くなり,低い周波数のみが減衰します。
現実的な使い方を考えた場合「ベースがうるさい!」というパターンはあまりないかと思います。ベースは音程がありメロディーの一部ですから,それを削る事は少ないかと思います。
どちらかというと「キックがボコボコ大きすぎてスピーカーがバコバコ言ってる!キックを少し弱めたい!」と言う方が多いかな?と思いますので,使い方としてはあっているかもしれません。
この2点に気が付き今回の回路を考えたと,いうのが今回のアイディアです。
抵抗器を工夫すると,何だか色々な特性を作れそうです。
さて,もう少しイタズラしてみましょうか?
先程までは並列しか考えてきませんでしたが,「単純に減衰側が効きすぎなければ良いんじゃないの?」と,直列に抵抗をいれるというパターンも考えてみます。
え?Rf-bを変えてもできそう?
もちろんできます。けど,思いついちゃったらやってみたくないですか?ちょっとイタズラしてみましょう。
というのが,いくらAカーブに似せようとも,ボリュームを減衰側に回しきってしまうと無限に減衰してしまうのは変わりません。
ここを少し対処してみます。
減衰側にボリュームと直列に抵抗器を入れてみました。
コレでボリュームを回しきっても直列に入れた抵抗器のの抵抗値が残るため,分圧比としては0%になりません。
特性としては上図のとおりとなりました。定数は先の並列に抵抗を入れてみた回路とほぼ同じです。Rs-bの追加と,それに伴いRp-a,Rp-bを調整しています。
先の回路では減衰側へ回しきった際に-23dB程度まで減衰してしまうのに対し,こちらの回路は-11dB程度と,回し切った際の減衰を抑える事ができました。
しかし,だいぶ曲線の雰囲気が変わってしまいました。
この辺は「回路としては最後までボリュームを回し切っていない」のと,それに伴い先に書いた「ボリューム全体の見かけの抵抗値の変化量」が減るためです。
う~ん・・・ちょっとこれは弄りすぎでしょうか?(苦笑
でも,先に書いた通り低音を減衰させる時って,キックがデカすぎてスピーカーボコボコ言っちゃってるから~とかだよなぁ・・・等,グラフが見えると考えるのも捗りますね。
とりあえず,制限できる事はExcelのグラフ上ではありますが確認できました。
この辺はできる事は確認しつつ,目的に応じて使い分ければいいかな?と思います。
さて,何だか妙な事を延々と検討してきましたが,うまく動きそうですし,面白そうな回路にはなってくれそうです。
今回は試作してみようか?と部品もいくらか買ってきたので,試作したら別途記事とするか・・・ここに追記するかしてみようと思います。
私自身,本を読んだりしながらトーンコントロール回路を作った事はありますが,案外うまく行かないというのがホンネです(苦笑
いろんな人の話を読んでいると,やはり一発でうまくは行ってくれないようで,四苦八苦している話はちょこちょこ見かけます。
この回路,先に定数を幾らか掲載していますが,VRが250kΩといったようにかなりインピーダンスの高い回路となっています。
かつ,どこか分圧回路の一種な側面があると書きましたが,分圧回路であるため入力側につながる回路や出力側につながる回路のインピーダンスの影響もうけます。
・・・等々,ちょっと扱いにくい回路です。そのため,一般的には前後にバッファーアンプを入れます。
更に,これらを改善したNF型トーンコントロール回路という回路があります。
オペアンプの帰還回路に今回のCR型トーンコントロール回路そっくりな回路を入れ,帰還量に周波数特性を持たせてしまうという回路です。
こちらの方が能動回路が回路中に入るため,周辺回路の影響を受けにくくなり動作は安定します。
ここで,帰還量に周波数特性を持たせる仕組みはCR型トーンコントロール回路と同じですから,今回検討した内容はNF型トーンコントロール回路でも応用できます。
その他,私見ですが,抵抗器をちょこっと追加して機能が改善するなら検討してみようと思う派です。
抵抗器って1本10円ぐらいしかしませんから,抵抗器を数本足して何か改善したとしても追加費用は高々数十円,それで機能や使い勝手が改善するのなら安いもの,と思っています。
かつ,抵抗器は工作で標準的に使っている誤差5%の物であればE24系列がそろっており微調整もしやすく,「複雑さ」を抵抗器側に逃がしてしまった方が自由度が高いと思います。
今回の回路は全て抵抗器でのイタズラですから,応用時に微調整がしやすく,適用しやすい回路に仕上がってたかな?と思います。
今回の回路のような抵抗器の10円細工,Tipsとしていかがでしょうか?
【改訂履歴】
Rev0:初版Release (2024-02-13)
Rev1:周波数特性グラフ差し替え,定数修正,一部追記 (2024-02-14)
Rev2:本ブログ記事使用に関する注意事項作成に伴い,表示を追加 (2024-02-28)
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