アンプ,どう構成しましょう?
先に近況でちょこっとだけ登場しましたが,アンプを設計・・・というか,まだ構想段階ですが,少しずつ検討をして行っており。
一部回路は設計まで終わり,まだちゃんとリリースするほどではないのですが,どんな感じなのか?の話でも。
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まずは,何で急に設計を始めたのか?という話でも。
大本の発端はP1000Kの密閉型を試作したことではあるのですが,秋月のHPを見ていた所,「TTC004B」というトランジスタを見つけたのが拍車を掛けました。
(秋月電子通商HPより)
これ,東芝の中電力用のNPN型トランジスタなのですが,TTCという型番で。
TTC?2SCじゃないの?と興味を持ったのが始まりです。
調べてみると東芝,どうももう2SC/2SAという番号にこだわらなくなったようで,TTC/TTAという番号のバイポーラトランジスタや,その他の接頭辞のバイポーラトランジスタ/FETを出していました。
FETではそういった番号のものがあるのは知っていましたが,バイポーラトランジスタもだったとは・・・気づきませんでした。
データシートを見てみると,なんとコンプリメンタリのトランジスタがあり,更に用途としてオーディオアンプのドライブ段用と,オーディオにちょうどよさそうです。
絶対最大定格を見るとコレクタ電流は1.5Aまでと,ちょっと頑張れば1A出力で8Ω負荷で4Wrms出せます。
おや?これ,なんか使えそうだぞ?と。
で,特性を見ると1Aぐらいまでは,同形状,TO-126Nの2SC3422に特性が良く似ており。
その他,TTC015Bというトランジスタもあり,これまた同形状で1Aぐらいまでは特性が似ており。
お?これは面白いんじゃないか?と。
これ,1A以下で設計しておけば,どのトランジスタにも差し替えられます。
差し替えられるという事は,聞き比べなどを楽しむ人も出てきますし,ネタとしては面白そうです。
TTC004Bはオーディオ用を謳っており,2SC3422はオーディオでの使用例も見かけたトランジスタ,更にTTC015Bは高速スイッチング用でなんか速そう(実際fτ=150MHz,短波帯の無線にすら使えそう)です。
まして,先に掲載の通り40円のトランジスタです。工作にはもってこいです。
かつ,個人的にTO-126Nというパッケージが好きでその点でも「これ使ってみたいな」と思ったのもあります。
個人的に扱うのが中電力までが多く,TO-220はちょっと大きくて邪魔くさいな,というのが本音です。
そういう意味では,新しい採番形態,現行の部品でTO-126Nのトランジスタを見つけたのはラッキーでした。
「とりあえず1Wrms出りゃええやろ!」と軽く計算してみると,出力短絡,DCを入力されたという極端な条件(個人的にこの条件一応確認します。趣味の工作なのでうっかりはあるので・・・)で計算してもまだいけそうな感じです。
これなら乱暴な工作されても行けそうです。
ならば!と久しぶりにオーディオの設計始め,アレコレ考え始まったと言う物です。
さて,パワーアンプ部はそんな感じで設計が始まって・・・っていうか,もうほぼ設計終わってるんですが,付帯回路も色々と検討しており。
今までアンプ単体で制作したことは結構あるのですが,一つの「インテグレーテッドアンプ」とか「コントロールアンプとのシステム」といった形で一揃いで作り切ったことがなく。
子供の頃に作った時は「電源器!」「アンプ!」「トーンコントロール!」「セレクタ!」といった感じで,バラバラに作った大きさもバラバラなものを不格好に並べて重ね使っていました。
その後,あまりオーディオを弄らなくなった・・・というか興味が薄れてしまい,工作の対象から外れていました。
ただ,一度はオーディオの製作をしており,自分なりに気に入ったものは使いたく。
でも買えば高価,中古を見繕いながらオーディオを幾らか楽む程度でした。
その中で見つけた,今も使っている気に入ってるアンプがあります。
それがこちら・・・
DIATONこと,三菱電機のDA-U880です。
上の写真ではDS-BD1(三菱電機)と並んでいますが,今はDS-201(同じく三菱電機)と組み合わせて使っています。
最も,諸事情アリでの生活なので,こんな感じでだいぶなってない使い方ですが(苦笑
個人的にPioneerのS-N702が長く,その間も割と色々と試してたのですが,この組み合わせが気に入り。
アレコレ悩んできたのですが,この組み合わせに出会ってからはあっさりと落ち着いてしまいました。
さて,このDA-U880,売りは何だったかというと「出力が1μsecで100Vに到達する」と言う物でした。
電子回路を弄っている方はあの単位が頭に浮かんできますね?
そう,このアンプ,スルーレートが100V/μsecなんです(苦笑
ちょっと耳を疑う性能ですよね?でも,なんと1983年製です。
クソどうでもいい情報ですが,私が生まれた年です。なお,これを書いてる今,40歳です。
ほかの性能を見ても,利得幅もTHD=0.1%の定格出力で5~100kHzだったり,定格出力1kHzでTHD=0.008%だったりと,今時のアンプと遜色ない性能です。
回路構成としてはDCサーボアンプで,コンデンサ類がかなり排除されています。
その他,入力はFETを使用してるとの事です。
デザインは見ての通りの昔よく見かけた感じのスッキリした落ち着いたデザイン,そして目を引くのは蛍光表示管のパワーメーターです。
機能面では「TONE DEFETAE」というスイッチがあり,トーンコントロール回路を切り離せる仕様になっています。
これはオーディオが好きな人にはうれしいな機能でしょうか?
ちょっと変わった感じの機能だと,「HIGH FILTER」というスイッチがあり,8kHz以上の高音を減衰できます。
これがなかなか塩梅が良くソフトな感じになり,仕事帰りで疲れている時などに入れると聞きやすくなります。調べてみると,どうもアクティブフィルターを使っているようです。
調べるとこの手の機能を搭載した機種はソコソコあったようですが,DA-U880はそれらが塩梅よく搭載,配置,設計されている感じです。
音は癖がなく,クリアながらもパワフルにデカいスピーカーを駆動してきます。
個人的に好みの音で,すっかりこれが気に入ってしまっています。
さて,すっかりべた惚れのDA-U880ですが,このアンプに出会ってからと言う物,アンプの好みや考え方もだいぶ変わっており。
最も,DA-U880でDIATONEとの付き合いが始まったわけではなく,その前にDA-U630というアンプに出会っており,そこからDIATONEを使い始めました。
結果,スピーカーもDIATONEになり,密閉型のDS-201となっています。
考え方が変わっている以上,工作での設計も変わっています。
元より,より高音質にとは思っていましたがそれがより強くなり,徐々に「忠実に」という感じになっていっています。
機能面も「ホントに便利なものをつける」という方向性になっていっています。
結果,それらの事が今回のアンプの検討には色濃く出ています。
自分の中でも,今までになく悩みながら検討していると感じています。
さて,色々悩んではいる感じですが,少し構成が定まってきました。
今現在考えている構成は・・・
(クリックで拡大します)
こんな感じですね。
このコンセプトにたどり着くのにだいぶ唸りました(苦笑
コンセプトは・・・
パワーアンプ付きプリアンプです(は?
パワーアンプにプリアンプじゃなくて,プリアンプにパワーアンプを統合した「Integrated Amplifire」です(病気
・・・あ,ソコ!ペットボトルはちゃんとごみ箱に捨ててください!人に投げないでください!リサイクルだよ!
これちゃんと理由があります(苦笑
先にTTC004Bの節で書いた通り,このアンプ「1Wでりゃええやろ!」と設計されたものなので大した出力が出ません。
そもそも,接続する予定でいるのは,これまた先に書いたP1000Kの密閉型スピーカーです。
ここで,そのP1000Kの密閉型スピーカーなのですが・・・
この通り,結構小型で。デスクの上においても邪魔になりにくいサイズです。
・・・って言うか,邪魔にならないサイズに設計しています。
あくまで作るのも使うのも気楽なオーディオクラフトという位置付けの製作です。
ここで,P1000Kって88dB/w・mと結構な感度で。
デスクに置いて使った場合,スピーカーとリスニングポジションは至近距離となります。
そこで1Wも入力したら耳元では90dB近くなってしまうでしょう。
では逆に少し離れて使ったら?と考えたとしても,日本の住環境では大きな部屋と言ったらリビングぐらい。
その他の部屋は8畳程度でしょうから,部屋の壁面にセットを設置,反対側の壁に寄りかかって聞いたとしてもスピーカーからは3.6m程度しか離れません。
結果,11dB程度の減衰となりますが元が88dBなのでまだ77dB,日常会話程度の音圧よりは大きいです。
つまり,1Wも入力すれば十分な実用なんですね。
とはいえ,パワーアンプといったらやれ10Wだ50Wだ100Wだといったアンプが一般的です。
1Wしか出ないアンプがいっぱしのアンプ並みの大きさでは何だか見栄えがしない,というのは本音です。
なので,少し小さいサイズで,どちらかというとプリアンプっぽさを出した方がいいのではないか?と。
また,オーディオの環境も人それぞれです。
とはいう物の,今はスマートフォンで音楽をダウンロードして聞くというスタイルが多いのではないか?と思います。
すると信号の出力はヘッドフォン出力ですから,他のオーディオ機器とは信号のレベルが違い,レベル合わせなどの機能があった方がいいでしょう。
更に,スマートフォン単体でヘッドホンで音楽を聴くことができますから,プリアンプにヘッドフォンアンプ機能があっても何だか機能的にタブリになってしまうでしょう。
それどころか,Bluetoothヘッドフォンが普及している昨今,ヘッドフォンならわざわざアンプに接続するような使い方はしないでしょう。
するとスピーカーだけでよいのではないか?となってきます。
そのため,プリアンプにチョットはスピーカーを鳴らせるアンプを内蔵,といった構成にすることにしました。
かつ,途中何か所かライン出力に出力できるようにし,システムアップの際はそれらの出力を使えるようにしました。
今の所,レベル変換で1出力,トーンコントロールやフィルターを通した所で出力できるようにしています。
その先につながるアンプにどの程度の機能が付いているのか?はそれぞれの製品で異なります。
そのため,最悪,本機に搭載される機能を提供できる,という構成にしています。
この点もちょっと考えた点で,先々,何か作るたびに毎回トーンコントロールなどを搭載するのは面倒だろう,と。
だからこそ,パワーアンプ付きプリアンプでもあるのです。
個人的な経験で,アンプに搭載されるトーンコントロールなどの機能が気に入っていたのに,他の機器に使えず残念な思いをしたことは結構あります。
この点でもこんな構成になっています。
結構色々考えた結果,こんな構成になってるんですね(苦笑
構成が決まった所で,現状どんな進捗なのか?というと,正直パワーアンプの設計は終わりシミュレーター上で動作確認は完了しています。
回路はというと・・・
(クリックで拡大します)
こんな感じになっています。
2SC1815と2SA1015で描かれていますが,2SC2240/2SA970,2N3904/2N3906に差し替えても動くように設計しています。せっかく電力増幅段が差し替えられるのですから,小信号増幅も差し替えてみたい・・・じゃない?
もし制作の結果が待ちきれないという人が居れば,シミュレーター上では動いてますのでどうぞ。そしてトランジスタ差し替えて遊んじゃってください。
回路図だけを見て「作りたい!」という人はそれなりに電子工作に慣れている人でしょうから,以下に幾らか注意点や設計条件を書いておきます。
電源は1回路辺り1A程度電源を準備すれば動きます。ステレオでも2Aで動きます。
トランジスタは5.8℃/Wのヒートシンクで周囲温度50℃で設計してまいすので秋月で売ってるヒートシンクで行けます。
上記ヒートシンクでDC入力で出力短絡,過電流保護動作継続でも一応壊れないようになっています。
ただし,この場合ヒートシンクは100℃程度に到達しますのでやけどにはご注意ください。
同条件8Ω負荷時でヒートシンク温度は最大70℃程度,そんな滅茶苦茶な条件ではなく正弦波最大出力時は60℃程度です。いずれにせよ熱はそれなりに出ますので,ケースに入れる際は排熱やケース材料の耐熱温度に注意してください。
シミュレーション用の回路なので作動増幅回路のバランス調整が描かれていません。R16とR17を適宜半固定抵抗に置き換えてください。
Q11,Q12のバイアス電流は5.56μAとやや大きめです。この辺は要改善でしょうか?
また,最終的に製作に至るまでに多少定数は変更になるかもしれませんのであしからず・・・
で,これ,意図せずだったのですが・・・
この回路と構成がほぼ同じです。
これ何の回路かというと・・・
NJM4580の等価回路です。
(新日本無線データシートより,ver.2003-03-13,この頃のは1か所●が足りません(苦笑))
いや,意図してなかったのですが,同じ構成になってしまって・・・
じっくり見ればわかりますが,「カレントミラーによって定電流が与えられた,コレクタ抵抗がカレントミラーによる能動負荷の差動増幅回路(私の回路ではQ9~Q13)」で入力を受けています。
その出力は「コレクタ抵抗がカレントミラーによる能動負荷のエミッタ接地増幅回路(Q3とQ8)」に入り「その出力にバイアス電圧をはかせてプッシュプル出力(U1,U2,Q2,Q5,Q6,D1,D2)」となっています。
そして右下に「定電流回路(I1)」があり,「それが差動増幅回路とエミッタ接地増幅回路のカレントミラーの電流源になっている」という回路です。
つまりこの回路,出力1WのNJM4580,要はオペアンプなんですね。
D級を除き,パワーアンプって実はオペアンプと仕組み同じなんです。
ただ,構成は様々で,その中でまさかNJM4580と同じになってたとは思いませんでした。
・・・と,何かちょっとワクワクしてきません?
ICなんて作れないじゃないですかぁ?
でも,ICって中身は配線済みの小さなトランジスタの回路じゃないですかぁ?
論理上,でっかくてもよかったら同じ動作をする回路を作れるじゃないですかぁ?
実は初期の頃のオペアンプって,今のように小さなICではありませんでした。
初期の頃はモジュールだったんです。あくまで回路の名前なんですね。
そのため,「ICという構造がオペアンプたらしめるもの」と言う訳ではなく,「トランジスタで作ったもの」をオペアンプって呼んじゃって平気なんですね。
もちろん,米国は Analog Devices 様の超高性能オペアンプ!みたいな物は作れません。
これ,電子工学的に理由があります。特に「高速」や「高精度」といった性能を出すの大変です。
これらの性能の実現には「小さい」「トランジスタ同士が近い」「トランジスタの特性がそろっている」といった性質が求められ,これはICだと実現が容易です。
と,こんな感じでアンプの設計は終わっています。
更に言うと・・・
シミュレータ上ではありますが,実はもう音は聴いてるんです。
LTSpice,wavファイル(Liner PCM オーディオファイル)を電圧源にしたり,シミュレーションの結果をwavファイルに出力することができます。
そのため,回路を通すとどんな音になるのか?というのが確認できてしまいます。
結果としてちょっと高音が荒い感じでした。
ただ,そう悪くもないかな?といった感じでした。
いろいろ工夫してだいぶ改善はしていますが,それでも回路の結果はどうか?とアラ捜し的に聴いてしまうと「高音がわずかに荒いかなぁ~」という感じです。
そのため,差動増幅回路(Q9~Q12)だけでも2SC2240/2SA970にしてみては?という感じです。Q8も変えるといいかもしれません。
あとは電力増幅なのでそこは精度よりパワーの世界,そこで詰めてもしょうがないか?NFBもかかっているのでいいだろう,と。
逆に言えばNFBで巻き取る形になりますので差動増幅回路が肝になり,先に書いた通りQ9~Q12に良い物を使った方がいいかと思います。
さて,パワーアンプについてはほぼ設計が終わっていますが,ほかの付帯回路はというとまだ設計中です。
かつ,耳で実際に聞いてみたく,ここは実際に回路を作ってみて実験しながら進めようかと思います。
なので回路全体の設計が終わるのはもう少し先になります。
そのため,最終的な制作はまだ先になるでしょう。夏ぐらいには作りたいかな・・・
ブログとしては,その実験の様子から書いていこうかと思います。
最も・・・道具が色々ダメになってしまっていて,アナログの実験用電源を作るところから始まると思います(苦笑
さて,長々とは書いてきましたが,久しぶりに電子回路弄りたくなって弄ってる感じです。
どこまでやるのか?はたまたどこかでとん挫するのか?立ち消えるのか?私にもわかりませんが,ちょっと続けてみようと思います。
お暇でしたら,よろしくお付き合いください。
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