続・秋月のACアダプターで正負両電源を作ってたって話
さて,最近やってた事, 前回 に引き続き秋月で安価に売られているACアダプター正負両電源を「もう少し」と追い込んでました。
そんな,他愛もない話でも書いておこうかと思います。
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さて,今回作っていたのは±9Vのアナログ回路の実験用電源ですが,元電源をトランスではなくスイッチング電源のACアダプタとしており。
ご存じ,スイッチング電源はノイズが多いのが欠点です。
この点,「スイッチングをしているから」ぐらいで片付けられてしまいますが,スイッチング電源が出すノイズは多岐にわたり,それぞれ問題となる点の性質も異なります。
まず,スイッチング電源の構造として,スイッチングの結果をLCフィルターで平滑化するような構造ですが,平滑化しているだけなのでリプルが残ります。
この点はノイズの例に上がることが多いですね?
しかし,昨今のスイッチング電源はスイッチングの速度がものすごく速く(中にはMHzのオーダーの物も),リプルも高速なため低速なアナログのICだと応答が間に合わず電源から出力にノイズが漏れてしまう場合もあります。
これは3端子レギュレーターも同じで,3端子レギュレーターと言う物は数kHzでリプル除去率(入力の変動に対し出力を一定に保つ能力)が低下し始まります。
この,3端子レギュレーターは低速という点は結構各所で聞く話かと思います。
そのため,今回はRCフィルターを通して使っていたのですが,これが概ねうまくいったものの完全ではなく。
やはり,LCフィルターじゃないと厳しいみたいですね。
というのが次の話です。
この妙な発振,ACアダプタの出力に含まれているノイズなのですが,おそらくACアダプタのスイッチングのトランジスタや整流ダイオードのスナバ回路がうまくいってないために生じているものかと思います。
で,これがあんまりにも速く,セラミックコンデンサをもってしてもバイパスしきれませんでした。
スイッチング電源,実はスイッチングの周波数以外にもこんなノイズも発生します。
「車は急に止まれない」と言いますが,実はダイオードやトランジスタも急には止まれません。
逆回復時間や蓄積時間と言う物があります。
もちろん,ショットキーバリアダイオード等,それらが無い物もあります。
しかし,安価なACアダプターだとコストの兼ね合いからファストリカバリーダイオードを使用しているかと思います。
すると逆回復時間があります。
ダイオードの仕組みを考えればわかるのですが,P型,N型半導体をくっつけると空乏層が出来上がります。接合ダイオードってやつですね?
この空乏層を超えられる電圧をかけるとダイオードは電流が流れます。その時の電圧が順方向電圧でしたね?
さて,電流が流れ始まると空乏層の中に電子などがある状態になるのですが,これを電圧をかけるのをやめてOFFしようとしたらどうでしょう?
空乏層には電子が残っています。これらの電子がなくなり,空乏層に戻るまでダイオードをはOFFしません。空乏層に残ってしまった電子がなくなるのには少し時間が必要で,接合ダイオードがOFFするのには少し時間が必要なんですね。
これが逆回復時間で,同様の現象はバイポーラトランジスタのベース~エミッタ間でも起きます。
なので,ON/OFFで使うとバイポーラトランジスタって速度に限界が生じます。
そうならないよう,ちょっと工夫が必要なんですね。
この点はFETは強いのですが,逆にFETは入力容量が問題になります。
可変容量ダイオードを思い出してもらえばわかるのですが,ダイオードって逆バイアスを掛ける(電気の流れない向きに電圧をかける)とコンデンサになるんでしたね?
これは空乏層は電気がない=電気を通さない通さない層であるため,結果的に絶縁体となりコンデンサの様に見えるんでしたよね?
ここで,FETはゲート~ソース間に逆バイアスをかけて空乏層の広さを制御,空乏層でドレイン~ソース間の電流が流れるのを邪魔して電流を加減してましたね?
つまり,可変容量ダイオードのような使い方をしています。結果,ゲート~ソース間には容量,コンデンサが生じます。
さらに,FETでもMOS-FETでは酸化膜で明確に絶縁体の層があります。このため,MOS-FETでは明確にコンデンサが形成されます。
なので,電気がたまってしまい,これを引き抜かないと電流が変化しない,遅れが生じるんですね。
これらの現象により,半導体の中では電気は急に止まれません。
これが結果としてノイズの原因になったりします。
逆回復時間中は逆バイアスにもかかわらず電流が流れてしまう,つまり逆流しちゃうんですね。
この時,スイッチング電源の場合はダイオードのアノードは0V(フライバック電源の場合は0どころかマイナス)になっています。
急激なショートになり,スパイク状のノイズを出してしまいます。
このスパイク状というのが非常に厄介で,強く一瞬=周波数が高く強いノイズになってしまいます。
その他,ダイオードがオフすると今まで流れていた電流がなくなります。
すると配線などで損失していた電圧損失がなくなります。
結果,アノード側の電圧が少し上がるのですが,その結果順方向電圧を超えるとダイオードは再びON,すると電流が流れ電圧損失でまたOFFと,ON/OFFを繰り返すことがあります。
更に,コイルがつながっているとこの現象を起こしやすくなります。
コイルというのは今流れている電流を維持しようとする性質があり,ダイオードがOFFして電流が流れなくなっても電流を流そうとしてしまいます。
結果,ダイオードがONする分だけの電圧を生じてしまい,先に書いたようなON/OFFの繰り返しを起こしてしまいます。
これらのノイズを軽減するのがスナバ回路です。
そのため,スナバ回路がうまくいっていないと先に掲載のようなON/OFFの瞬間から尾を引くようなノイズが出てしまいます。
このように,スイッチング電源って色んなノイズを出してしまいます。
「ON/OFFしてるから」という単純な言葉では終わらない話なんですね。
かつ,途中説明しましたが,高速=高周波で,半導体の能動回路で除去するのが困難なんですね。
さて,回路としてはもう一つ,実験的にコイルを追加するところまで試し,原因だけつかんだら一旦完成でいいかな?と思ってます。
というのが,今回残っているノイズ,ものすごく高速すぎて耳には聞こえない帯域です。
今回実験したいのはオーディオの周辺回路なので,一旦はこれで使っちゃっていいかな?と思ってます。
そういった方向でとりあえず記事はまとめ始まっているので,もう少しでReleaseできると思います。
あと少し,気長にお付き合いできればと思います。
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